台湾のニュースで独学する中国語《台湾華語》

新聞記事を教材にして、台湾社会の「今・現在」を読みながら、初級者向けの台湾華語・台湾中国語を独学するブログです。

台湾の大学で学生獲得競争が過熱 iPad をプレゼントする学校も

台湾も深刻な少子化となっていて、大学が学生獲得の困難に直面しているというニュースです。
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大學指考7月1日至3日舉行,今年報考人數比去年再減3000多人,首次跌破5萬人,學校招生更困難。
(台湾の大学入試が、7月1日から3日まで開催される。今年の受験人数は昨年より3000人強もまた減少、初めて5万人を下回り、学校の学生獲得は更に困難を増している。)

私大は、学生を呼び込むために、初年度の学費を安い公立大に揃えたり、高額な奨学金を用意したりと学生獲得競争が過熱。中には新入生に iPad をプレゼントするという学校まで。

理工搶招社會組生 大考採計也瘋狂
(理工系の学部が文系の学生を奪い合う 入試採点にも異常が)

「搶」(qiǎng) は奪う、争って取る、という動詞。
学生の減少で、理工学部が文系の学生を呼び込もうとする異常な事態に。

少子化に加えて、台湾の政権が中国寄りではない政党に交替したこともあって、中国からの留学生も減少して、まさに「雪上加霜」の状況。
「雪上加霜」(xuě shàng jiā shuāng) とは、"雪の上に霜がおりる" 、つまり良くないこと・苦難が重なるという四字熟語。

ある大学の学長はこう指摘します。
因應少子化,不少學校打價格戰,甚至調整入學門檻『降格以求』,導致學生程度越來越差,影響台灣高教實力。
少子化に対して、少なくない学校が価格戦争をしかけているが、入学の関門をいじるにいたっては「降格以求」だ。学生のレベルの更なる劣化をもたらし、台湾の高等教育の学力に影響するだろう。)

「降格以求」(jiàng gé yǐ qiú) は、「要求を下げて妥協する」という意味の四字熟語。

「社會組」とは文学や経営学など、いわゆる「文系」の学生。
理工系の学部にもかかわらず、物理や数学の試験スコアのない、文系の学生まで入学基準を広げる学校も出はじめたのです。

「越來越差」は、中国語初級の文法で学ぶ「越來越〜」(ますます〜になる)の構文です。
「差」は、第1声 (chā) だと「差、違い」ですが、ここでは4声 (chà) で「質が悪い、劣る」の方の意味です。

国立鳳山高校の教師・朱さんは言います。
大學資工系如果著重軟體開發,社會組學生或許還可因應
(大学の工学部がソフトウエア開発を重視するということなら、文系の学生でももしかするとまだ対応できるかもしれません)

但物理系、電機系應該招具有基礎科學能力的學生,如果錄取社會組的學生,他們讀起來會很痛苦,老師教學也會遇到不少困難。
(しかし、物理や電機の学科では基礎科学を身につけた学生を取るべきです。もし文系の学生を入学させれば、学生は学ぶのに苦痛を感じ、教員も教えるのに多くの困難にぶつかるでしょう)


《このニュースの用語》
瘋狂 (fēng kuáng) 常軌を逸した、異常な
舉行 (jǔ xíng) 催す、執り行う
首次 (shǒu cì) 初めて
跌破 (diē pò) 下回る、下落する
門檻 (mén kǎn) ハードル、敷居
嚴重 (yán zhòng) 深刻
成績 (chéng jì / chéng jī) 「績」は台湾だと1声で発音されます。
獎學金 (jiǎng xué jīn) 奨学金
著重 (zhuó zhòng) 〜に重きを置く、〜を重要視する
軟體 (ruǎn tǐ) ソフトウエア
錄取 (lù qǔ) 採用、合格
或許 (huò xǔ)  もしかしたら
具有 (jù yǒu) 備えている、習得している

台湾 水害で野菜が高騰

台湾では連日の大雨で水害が発生。野菜の価格が高騰というニュースです。
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高麗菜十級跳 農委會要抓菜蟲
(キャベツの価格十倍に跳ね上がる 農政省はアオムシを捕まえる)

暦では、台湾の梅雨は端午節(旧暦5月5日)くらいまでと言われています。今年は例年より雨が少なく、カラ梅雨とも言われていました。
ところが6月になってから全国的に雨続き。記録的な豪雨で各地に甚大な水害が発生しました。
台湾全土で農作物の被害総額は6千万元(日本円で約2億3千万円)を上回るとされ、特に野菜の産地である雲林(台湾中部の県)の被害だけで全体の 42% を占めるとのこと。

「高麗菜」(gāo lí cài) はキャベツ。「麗」の字はふつうは第4声 (lì) で発音しますが、「高麗」だと国名(朝鮮地域の古称)で第2声になります。
「菜蟲」(cài chóng) は、葉っぱに付く青虫・イモムシの類ですが、ここでは野菜を不当値上げしている業者の喩え。

林聰賢說,農委會前天已釋出兩千公斤的蔬菜,但昨天菜價還漲,『怎麼會這樣?』事有蹊蹺。
(農政省は一昨日すでに2トンもの野菜を市場に流通させていると農相の林聰賢 氏は語る。にもかかわらず昨日、野菜の価格は高騰。「どうしてこんなことに?」疑惑が広がる。)

「農委會」 日本でいうところの農林水産省に相当。
「菜價還漲」(cài jià hái zhǎng) 「野菜価格が更に上がる」
「蹊蹺」(qī qiāo) は「不可解」「疑念」。「事有蹊蹺」で「その事には怪しい点がある」といった意味になります。

雲林是全國蔬菜主產地,葉菜類受損漲幅大合理,但非雲林產區的野菜也跟著大漲,就明顯不合理。
雲林県は野菜の主要な産地で、葉菜は被害を受けていて大幅な値上がりは妥当だ。しかし雲林産ではない野菜まで高騰しているのは、明らかに不当だ。)

暴騰している野菜の1つはキャベツですが、キャベツは暑さに弱いため、宜蘭県南投県といった涼しい地域で栽培されていて、水害のあった雲林ではほとんど作られていません。
そのため、この値上がりは不当な「価格操作」、「便乗値上げ」だと政府は指摘。

「非雲林產區的野菜」(雲林産ではない野菜)
「非〜」は「〜以外」を表すのに、書き言葉ではよく使います。たとえば「非員工請勿進入」。意味は「従業員以外は立ち入らないでください」ですが、あまり話し言葉ではないので、極端に訳すなら「従業員にあらぬは入るべからず」みたいな感じでしょうか?

「合理」(hé lǐ) 「不合理」(bù hé lǐ)
「合理」は、割に合う、適正、妥当といった意味。
日本語の「合理的」とは少し使われ方が違います。たとえば人に頼まれごとをしたときに「不合理(割に合わない)」と言ったりします。
また、価格に対して使われることも多く、「この店の料理の価格は "合理" だ」のような使い方ができます。

下雨前買高麗菜一顆才十元,昨天買一顆同樣大小的,菜販喊價破百元
(雨の前に買ったキャベツは1玉たった10元、昨日同じような大きさの1玉を買ったが、八百屋の言い値は100元を超えていた)

「喊」だけだと大声で叫ぶことですが、「喊價」(hǎn jià) は、売り手の値付け、言い値、という意味です。
「顆」(kē) は丸っこい形状や塊を数える量詞です。たとえば「一顆藥」。

《このニュースの用語》
明顯 (míng xiǎn) 明らか、はっきりしている
抓 (zhuā) 掴む、捕まえる、取り締まる
不耐熱 (bù nài rè) 暑さに弱い、暑さに耐えない
蔬菜 (shū cài) 野菜
甘藍菜 (gān lán cài) キャベツ。「高麗菜」と同じ
跟著... (gēn zhe) ...に従って、...に連れて、付随して
大小 (dà xiǎo) サイズ
才 (cái) たった、わずか、〜ばかり
脆弱 (cuì ruò) 弱い、脆い

蟹に巻かれたゴムバンド

中国天津のニュースです。
標題にある「両岸」(liǎng àn) とは、台湾と中国を表す呼び方で、例えば「台・中関係」なら「兩岸關係」と言います。
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買螃蟹 還是買橡皮筋
(買ったのは蟹? それともゴムバンド?)

誇張的螃蟹橡皮筋
(とんでもない蟹のゴムバンド)

台湾でもカニはよく食べられていますが、中国で「嵩増し」のために、やたら太いゴム紐で縛られているカニが売られているという話題です。
「誇張」(kuā zhāng) は、日本語の「こちょう」とほぼ同じですが、「大げさな」「ありえない」「馬鹿げている」といった意味です。

買螃蟹都知道,為了怕被蟹螯給夾到,商家多會用草繩,棉繩或塑膠繩綑綁螃蟹,隨著時代進步,現在草繩也改成寬版橡皮筋
(蟹を買うなら誰でも知っているように、蟹に挟まれるおそれがあるので、商店では草紐や綿紐あるいはビニール紐で蟹を縛る。時代が進歩するにつれて、現在では草紐はゴムバンドに変わった。)

「怕被蟹螯給夾到」(蟹のハサミに挟まれることを心配する)の一文を解説します。
「怕」(pà) は、「心配する」「危惧する」といった動詞。
「被」は、中国語学習の初級で習う受動態。「A 被 B +動詞」(A は B に〜される)の構文です。
「蟹螯」(xiè áo) は、カニの「ハサミ」のこと。中国語には、蟹のハサミに使う漢字もあるのですね。

「夾到」が「挟む」なのですが、ちょっと問題なのはその前に付いている「給」です。
「夾到」「給夾到」どっちでも、意味はほとんど変わらないようですが、動詞に「給」を付けるのは、どうも台湾中国語の特長だとも言われています。
台湾の中国語は、台湾語の文法を影響を受けていて、独特の言い回しになることがあります。

不過,天津消費者近日發現,買了三斤多螃蟹回家,橡皮筋竟然重達『一斤』。
(しかし、天津のある消費者は近ごろ気がついた。1.5 kg 強の蟹を買って帰ったのだが、ゴムバンドがなんと重さ 500 g もあったのだ)

この人が買った蟹は、量り売りで「三斤多」。「多」が付いているので、それを上回っていることを表します。
中国の1斤は 500 グラムなので、1.5 キログラム強ということになります。
ちなみに台湾の1斤は 600 グラムと、実は少し違います。明確にするために「台斤」と表記することもあります。

これらの蟹に巻かれていたゴムバンドは合わせると18本(18條)もあって、はたしてどれくらいの重さになるかと気になり量ってみたところ、なんと1斤。
ゴムバンドの重さが3分の1を占めていたことになり、「これじゃゴムバンドを買ったようなものです」と。
このような蟹を縛るのに使われているゴムバンドには、5ミリ以上もの太さがあるものも売られているそうです。

「條」(tiáo) は、線状や細長いものに使う量詞。日本語の数量詞だと「本」に相当します。
道路や魚を数えるのにも使えます。たとえば「下一條路」で「一本次の路地」になります。

《このニュースの用語》
螃蟹 (páng xiè) カニ
橡皮筋 (xiàng pí jīn) ゴムひも、ゴムバンド
「橡皮」はゴムのこと。または「消しゴム」も同じく「橡皮」。

納悶 (nà mèn) 不審に思う、いぶかしむ、
塑膠 (sù jiāo) ビニール、プラスチックなどの化学素材
繩子 (shéng zi) ひも、なわ
攤販 (tān fàn) 売店

竟然 (jìng rán) なんと、まさか、意外にも
所有 (suǒ yǒu) すべての

公克 (gōng kè) グラム
公斤 (gōng jīn) キログラム
公釐 (gōng lí) ミリメートル
公分 (gōng fēn) センチメートル

台湾 新卒給与が16年ぶり最高水準に

昨年(2016年/民國105年)、新卒の給与が、16年ぶりに更新されたというニュースです。
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隔16年 大畢生重返28K
(16年ぶり 大学新卒28000に戻る)

成長龜速 比不上麥當勞漲價
(成長は亀の歩み マクドナルドの値上がりと比べ物にならない)

台湾では、ここ十数年、給与水準が低迷して、とくに若年層の生活苦は社会問題になっていました。
この数年は少しずつですが回復して、昨年はついに、大卒の初任給が 28,116 元と、調査史上の最高を更新。
2万8千元台だったのは、2000年(民國89年)のころで、ようやく16年前の水準まで戻ったということになります。
日本ではいわゆる「就職氷河期」から最近までを、"失われた20年" と呼んだりしますが、台湾でも同じような不景気・就職難が続いていました。

「隔」は後ろに時間(日数や年数)を付けて、その期間が開いたことを表現します。
例:「隔了三天我又找朋友」(3日開けて私はまた友人を訪ねた)

しかし、16年の間に物価は上がっています。それに比べて、所得の成長速度は遅く、「マクドナルドの値上がりのほうが早い」ので、生活がラクになった実感はないだろう、と言われています。

今年將從私立科大餐旅系畢業的吳姓學生說,到大飯店實習後發現正職員工薪資才二萬四
(今年、私立科大の観光ホテル学科をまもなく卒業する呉さんは言う。大きなホテルでの実習の後、正社員の給与はたった2万4千元しかないことを知りました)

「科大」は、「科技大學(kē jì dà xué)」という、台湾の学校カテゴリの一種です。
日本で言うと、専門学校や工業大学のような、職業訓練に直結した学科が多く、かつては「技術学院」という分類でしたが、その後の教育制度の改変で「科技大」になりました。

「餐旅系 (cān lǚ xì)」。「系」は学校の学科や専攻のこと。日本語学科なら「日文系」。
「餐旅系」は、ホテル、旅行、飲食サービスなど、レジャー分野を学ぶ学科です。

「吳姓學生」は、「呉という姓の学生」という意味。報道などで氏名を明記しないときにしばしば使われます。

「才」にはたくさんの用法がありますが、ここでは「たった」「わずか」の意味。

除了每月須還學費貸約五千元,扣除在外租房,交通費,伙食費,幾乎所剩無幾,畢業看不到前景,只剩下錢『頸』,兩萬多元過生活,到處是瓶頸。
(毎月返さなければならない学費ローンの約5千元以外に、家賃、交通費、食費を差し引けば、ほとんど何も残らない。卒業しても前途は見えず、ただ残っているのはお金の問題だけ。2万元余りで送る生活は、いたるところ障害だらけだ)

「除了」「...を除いて」。
後に「以外」を付けて「除了...以外」という形もよく使われます。

「須還」(必ず返さなければならない)
「須」は必須、〜すべきの意味で、動詞の前に付けますが、これはけっこう文語体です。

「幾乎所剩無幾」(ほとんど何も残らない)
「所剩無幾 (suǒ shèng wújǐ)」で成語(四字熟語)なので、そのまま覚えてしまいましょう。読み下し文にすれば「残すところいくつも無い」。

「到處」は「いたるところ」「あちこち」「そこらじゅう」。
「瓶頸」は「ビンの首」つまりボトルネックのこと。

「看不到前景,只剩下錢頸」
「錢頸 (qián jǐng)」はそのすぐ後に出てくる「瓶頸」(ボトルネック)とつながって「金銭の障害」を指す造語ですが、その前にある「前景 (qián jǐng)」と読みが同じ。つまり脚韻を踏んでいるわけです。

台湾の大卒初任給は、2万8千元を超えましたが、大卒以外は次のようになっています。
高卒 23,380元、専門学校卒 25,198元、院卒 33,313元。
職種別の初任給ランクでは、トップは金融・保険業(31,059元)。次が電力・エネルギー分野(29,982元)。続いて、医療関連(29,680元)。
高給職は世界共通のようです。

《このニュースの用語》
畢業(bì yè) 卒業
「大学を卒業する」は「大學畢業」です。「畢業大學」と誤りがちなので要注意。

煩惱(fán nǎo) 悩む
比不上(bǐ bù shàng) 比較にならない、比ぶべくもない、敵わない
發現(fā xiàn)気づく
薪資(xīn zī)薪水(xīnshuǐ) 給与
起薪(qǐ xīn) 初任給 (「起」は開始、起点を表す)
幾乎(jī hū) ほとんど
扣除(kòu chú) 差し引く、控除する
新鮮人(xīn xiān rén) 新人、新卒、新社会人

台湾のニュースで学ぶ中国語