台湾のニュースで独学する中国語《台湾華語》

新聞記事を教材にして、台湾社会の「今・現在」を読みながら、初級者向けの台湾華語・台湾中国語を独学するブログです。

台湾 水害で野菜が高騰

台湾では連日の大雨で水害が発生。野菜の価格が高騰というニュースです。
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高麗菜十級跳 農委會要抓菜蟲
(キャベツの価格十倍に跳ね上がる 農政省はアオムシを捕まえる)

暦では、台湾の梅雨は端午節(旧暦5月5日)くらいまでと言われています。今年は例年より雨が少なく、カラ梅雨とも言われていました。
ところが6月になってから全国的に雨続き。記録的な豪雨で各地に甚大な水害が発生しました。
台湾全土で農作物の被害総額は6千万元(日本円で約2億3千万円)を上回るとされ、特に野菜の産地である雲林(台湾中部の県)の被害だけで全体の 42% を占めるとのこと。

「高麗菜」(gāo lí cài) はキャベツ。「麗」の字はふつうは第4声 (lì) で発音しますが、「高麗」だと国名(朝鮮地域の古称)で第2声になります。
「菜蟲」(cài chóng) は、葉っぱに付く青虫・イモムシの類ですが、ここでは野菜を不当値上げしている業者の喩え。

林聰賢說,農委會前天已釋出兩千公斤的蔬菜,但昨天菜價還漲,『怎麼會這樣?』事有蹊蹺。
(農政省は一昨日すでに2トンもの野菜を市場に流通させていると農相の林聰賢 氏は語る。にもかかわらず昨日、野菜の価格は高騰。「どうしてこんなことに?」疑惑が広がる。)

「農委會」 日本でいうところの農林水産省に相当。
「菜價還漲」(cài jià hái zhǎng) 「野菜価格が更に上がる」
「蹊蹺」(qī qiāo) は「不可解」「疑念」。「事有蹊蹺」で「その事には怪しい点がある」といった意味になります。

雲林是全國蔬菜主產地,葉菜類受損漲幅大合理,但非雲林產區的野菜也跟著大漲,就明顯不合理。
雲林県は野菜の主要な産地で、葉菜は被害を受けていて大幅な値上がりは妥当だ。しかし雲林産ではない野菜まで高騰しているのは、明らかに不当だ。)

暴騰している野菜の1つはキャベツですが、キャベツは暑さに弱いため、宜蘭県南投県といった涼しい地域で栽培されていて、水害のあった雲林ではほとんど作られていません。
そのため、この値上がりは不当な「価格操作」、「便乗値上げ」だと政府は指摘。

「非雲林產區的野菜」(雲林産ではない野菜)
「非〜」は「〜以外」を表すのに、書き言葉ではよく使います。たとえば「非員工請勿進入」。意味は「従業員以外は立ち入らないでください」ですが、あまり話し言葉ではないので、極端に訳すなら「従業員にあらぬは入るべからず」みたいな感じでしょうか?

「合理」(hé lǐ) 「不合理」(bù hé lǐ)
「合理」は、割に合う、適正、妥当といった意味。
日本語の「合理的」とは少し使われ方が違います。たとえば人に頼まれごとをしたときに「不合理(割に合わない)」と言ったりします。
また、価格に対して使われることも多く、「この店の料理の価格は "合理" だ」のような使い方ができます。

下雨前買高麗菜一顆才十元,昨天買一顆同樣大小的,菜販喊價破百元
(雨の前に買ったキャベツは1玉たった10元、昨日同じような大きさの1玉を買ったが、八百屋の言い値は100元を超えていた)

「喊」だけだと大声で叫ぶことですが、「喊價」(hǎn jià) は、売り手の値付け、言い値、という意味です。
「顆」(kē) は丸っこい形状や塊を数える量詞です。たとえば「一顆藥」。

《このニュースの用語》
明顯 (míng xiǎn) 明らか、はっきりしている
抓 (zhuā) 掴む、捕まえる、取り締まる
不耐熱 (bù nài rè) 暑さに弱い、暑さに耐えない
蔬菜 (shū cài) 野菜
甘藍菜 (gān lán cài) キャベツ。「高麗菜」と同じ
跟著... (gēn zhe) ...に従って、...に連れて、付随して
大小 (dà xiǎo) サイズ
才 (cái) たった、わずか、〜ばかり
脆弱 (cuì ruò) 弱い、脆い

蟹に巻かれたゴムバンド

中国天津のニュースです。
標題にある「両岸」(liǎng àn) とは、台湾と中国を表す呼び方で、例えば「台・中関係」なら「兩岸關係」と言います。
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買螃蟹 還是買橡皮筋
(買ったのは蟹? それともゴムバンド?)

誇張的螃蟹橡皮筋
(とんでもない蟹のゴムバンド)

台湾でもカニはよく食べられていますが、中国で「嵩増し」のために、やたら太いゴム紐で縛られているカニが売られているという話題です。
「誇張」(kuā zhāng) は、日本語の「こちょう」とほぼ同じですが、「大げさな」「ありえない」「馬鹿げている」といった意味です。

買螃蟹都知道,為了怕被蟹螯給夾到,商家多會用草繩,棉繩或塑膠繩綑綁螃蟹,隨著時代進步,現在草繩也改成寬版橡皮筋
(蟹を買うなら誰でも知っているように、蟹に挟まれるおそれがあるので、商店では草紐や綿紐あるいはビニール紐で蟹を縛る。時代が進歩するにつれて、現在では草紐はゴムバンドに変わった。)

「怕被蟹螯給夾到」(蟹のハサミに挟まれることを心配する)の一文を解説します。
「怕」(pà) は、「心配する」「危惧する」といった動詞。
「被」は、中国語学習の初級で習う受動態。「A 被 B +動詞」(A は B に〜される)の構文です。
「蟹螯」(xiè áo) は、カニの「ハサミ」のこと。中国語には、蟹のハサミに使う漢字もあるのですね。

「夾到」が「挟む」なのですが、ちょっと問題なのはその前に付いている「給」です。
「夾到」「給夾到」どっちでも、意味はほとんど変わらないようですが、動詞に「給」を付けるのは、どうも台湾中国語の特長だとも言われています。
台湾の中国語は、台湾語の文法を影響を受けていて、独特の言い回しになることがあります。

不過,天津消費者近日發現,買了三斤多螃蟹回家,橡皮筋竟然重達『一斤』。
(しかし、天津のある消費者は近ごろ気がついた。1.5 kg 強の蟹を買って帰ったのだが、ゴムバンドがなんと重さ 500 g もあったのだ)

この人が買った蟹は、量り売りで「三斤多」。「多」が付いているので、それを上回っていることを表します。
中国の1斤は 500 グラムなので、1.5 キログラム強ということになります。
ちなみに台湾の1斤は 600 グラムと、実は少し違います。明確にするために「台斤」と表記することもあります。

これらの蟹に巻かれていたゴムバンドは合わせると18本(18條)もあって、はたしてどれくらいの重さになるかと気になり量ってみたところ、なんと1斤。
ゴムバンドの重さが3分の1を占めていたことになり、「これじゃゴムバンドを買ったようなものです」と。
このような蟹を縛るのに使われているゴムバンドには、5ミリ以上もの太さがあるものも売られているそうです。

「條」(tiáo) は、線状や細長いものに使う量詞。日本語の数量詞だと「本」に相当します。
道路や魚を数えるのにも使えます。たとえば「下一條路」で「一本次の路地」になります。

《このニュースの用語》
螃蟹 (páng xiè) カニ
橡皮筋 (xiàng pí jīn) ゴムひも、ゴムバンド
「橡皮」はゴムのこと。または「消しゴム」も同じく「橡皮」。

納悶 (nà mèn) 不審に思う、いぶかしむ、
塑膠 (sù jiāo) ビニール、プラスチックなどの化学素材
繩子 (shéng zi) ひも、なわ
攤販 (tān fàn) 売店

竟然 (jìng rán) なんと、まさか、意外にも
所有 (suǒ yǒu) すべての

公克 (gōng kè) グラム
公斤 (gōng jīn) キログラム
公釐 (gōng lí) ミリメートル
公分 (gōng fēn) センチメートル

台湾 新卒給与が16年ぶり最高水準に

昨年(2016年/民國105年)、新卒の給与が、16年ぶりに更新されたというニュースです。
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隔16年 大畢生重返28K
(16年ぶり 大学新卒28000に戻る)

成長龜速 比不上麥當勞漲價
(成長は亀の歩み マクドナルドの値上がりと比べ物にならない)

台湾では、ここ十数年、給与水準が低迷して、とくに若年層の生活苦は社会問題になっていました。
この数年は少しずつですが回復して、昨年はついに、大卒の初任給が 28,116 元と、調査史上の最高を更新。
2万8千元台だったのは、2000年(民國89年)のころで、ようやく16年前の水準まで戻ったということになります。
日本ではいわゆる「就職氷河期」から最近までを、"失われた20年" と呼んだりしますが、台湾でも同じような不景気・就職難が続いていました。

「隔」は後ろに時間(日数や年数)を付けて、その期間が開いたことを表現します。
例:「隔了三天我又找朋友」(3日開けて私はまた友人を訪ねた)

しかし、16年の間に物価は上がっています。それに比べて、所得の成長速度は遅く、「マクドナルドの値上がりのほうが早い」ので、生活がラクになった実感はないだろう、と言われています。

今年將從私立科大餐旅系畢業的吳姓學生說,到大飯店實習後發現正職員工薪資才二萬四
(今年、私立科大の観光ホテル学科をまもなく卒業する呉さんは言う。大きなホテルでの実習の後、正社員の給与はたった2万4千元しかないことを知りました)

「科大」は、「科技大學(kē jì dà xué)」という、台湾の学校カテゴリの一種です。
日本で言うと、専門学校や工業大学のような、職業訓練に直結した学科が多く、かつては「技術学院」という分類でしたが、その後の教育制度の改変で「科技大」になりました。

「餐旅系 (cān lǚ xì)」。「系」は学校の学科や専攻のこと。日本語学科なら「日文系」。
「餐旅系」は、ホテル、旅行、飲食サービスなど、レジャー分野を学ぶ学科です。

「吳姓學生」は、「呉という姓の学生」という意味。報道などで氏名を明記しないときにしばしば使われます。

「才」にはたくさんの用法がありますが、ここでは「たった」「わずか」の意味。

除了每月須還學費貸約五千元,扣除在外租房,交通費,伙食費,幾乎所剩無幾,畢業看不到前景,只剩下錢『頸』,兩萬多元過生活,到處是瓶頸。
(毎月返さなければならない学費ローンの約5千元以外に、家賃、交通費、食費を差し引けば、ほとんど何も残らない。卒業しても前途は見えず、ただ残っているのはお金の問題だけ。2万元余りで送る生活は、いたるところ障害だらけだ)

「除了」「...を除いて」。
後に「以外」を付けて「除了...以外」という形もよく使われます。

「須還」(必ず返さなければならない)
「須」は必須、〜すべきの意味で、動詞の前に付けますが、これはけっこう文語体です。

「幾乎所剩無幾」(ほとんど何も残らない)
「所剩無幾 (suǒ shèng wújǐ)」で成語(四字熟語)なので、そのまま覚えてしまいましょう。読み下し文にすれば「残すところいくつも無い」。

「到處」は「いたるところ」「あちこち」「そこらじゅう」。
「瓶頸」は「ビンの首」つまりボトルネックのこと。

「看不到前景,只剩下錢頸」
「錢頸 (qián jǐng)」はそのすぐ後に出てくる「瓶頸」(ボトルネック)とつながって「金銭の障害」を指す造語ですが、その前にある「前景 (qián jǐng)」と読みが同じ。つまり脚韻を踏んでいるわけです。

台湾の大卒初任給は、2万8千元を超えましたが、大卒以外は次のようになっています。
高卒 23,380元、専門学校卒 25,198元、院卒 33,313元。
職種別の初任給ランクでは、トップは金融・保険業(31,059元)。次が電力・エネルギー分野(29,982元)。続いて、医療関連(29,680元)。
高給職は世界共通のようです。

《このニュースの用語》
畢業(bì yè) 卒業
「大学を卒業する」は「大學畢業」です。「畢業大學」と誤りがちなので要注意。

煩惱(fán nǎo) 悩む
比不上(bǐ bù shàng) 比較にならない、比ぶべくもない、敵わない
發現(fā xiàn)気づく
薪資(xīn zī)薪水(xīnshuǐ) 給与
起薪(qǐ xīn) 初任給 (「起」は開始、起点を表す)
幾乎(jī hū) ほとんど
扣除(kòu chú) 差し引く、控除する
新鮮人(xīn xiān rén) 新人、新卒、新社会人

台湾のミツバチ、謎の大量死

台湾のミツバチが大量死して、ハチミツの採取量が激減というニュースです。
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見出しは「蜂蜜剩2成」(残ったハチミツはたった2割)
台湾ではどの種類の蜂でも(ミツバチじゃなくても)ふつうは「蜜蜂」と呼ばれます。
「2成」は「2割」(20%)の意味。たとえば「5割」なら「5成」といいます。

今年龍眼蜜產量大減,因無法提供比賽需要的蜜量,全國蜂蜜品質評鑑報名人數比去年少了35%
(今年、龍眼ハチミツの生産量が激減、コンテストに必要な分量が供出できず、全国ハチミツ品評会の応募者数は去年より35%減る)

「龍眼」(リュウガン)は、台湾でよく食べられている、ライチ(荔枝)と似たフルーツ。
「因...」は「...だから」「...なので」と理由・原因を表す接続詞。
「無法...」は「...することができない」「する方法がない」。口語(話し言葉)だったら「沒有辦法...」ということが多いです。

「比」は、中国初級で習う比較の用法ですね。
「A 比 B 少了(数量)」は「B は A と比べて(いくつ)減少した」ということ。

蜜農認為農委會今年開放使用的益達胺農藥,是造成蜜蜂大量死亡的凶手
(養蜂農家は、農業委員会が今年から使用を許可したイミダクロプリドという農薬が、ミツバチの大量死を引き起こした下手人だと考えている)

但專家檢驗『蜂屍』未發現益達胺殘留。
(しかし専門家が「蜂の死骸」検査をして、イミダクロプリドの残留は発見されていない)

「農委會」の正式名は「行政院農業委員會」。日本だと農林水産省に相当する行政機関です。
「益達胺」(イミダクロプリド)という農薬はこれまで葉菜類にのみ使われていたのですが、2017年からライチやリュウガンにも使用が許可されました。
養蜂農家は、この農薬が蜂の大量死を招いたのではないかと考えていますが、ミツバチの死骸検査では残留農薬は発見されなかったとのこと。
ミツバチの大量死はいまだ謎のままです。
彰化(台湾中部の地名)のある養蜂家はこう語っています。
「ミツバチの大量死はかつてもありましたが、ほとんどが成虫だったのです。今年は巣箱の近くで幼虫が大量に死んでいるのが確認されています」

ハチミツの収穫量は去年からすでに減少していますが、今年はさらに悪化。往年の2割まで落ち込んでいます。

《このニュースの用語》
蜂蜜(fēng mì) ハチミツ
蜜蜂(mì fēng) ミツバチ
剩(shèng) 残る、残っている
屍(shī) 死体、死骸
龍眼(lóng yǎn) リュウガン
荔枝(lì zhī) ライチ
比賽(bǐ sài) コンテスト、競技会
報名(bào míng) 申し込み、応募
農藥(nóng yào) 農薬
專家(zhuān jiā) 専門家

提供(tí gōng) 提供する、差し上げる(日本語の「提供」ほど固い意味ではない)
例:「我提供給你比賽的報名表」(コンテストの申込書をあなたにお渡しします)
「給你」(あなたに)は、前方や最後の位置に入れてもかまいません(「我給你提供...」等)。

認為(rèn wéi) 〜と考えている、認識している
造成(zào chéng) 引き起こす(どちらかというと悪い結果に使われることが多い)
凶手(xiōng shǒu) 犯人(とくに殺人犯)、殺し屋

台湾のニュースで学ぶ中国語